これは、新人兵士を迎え入れて、とんだ災難に巻き込まれたサルモール司法高官オンドルマールの話である。
前回の話はこちら
フォースウォーンの陰謀に巻き込まれた。
新人の部下から2人の名前を聞いた時、そう直感した。
同時に、私はこの時を待っていた、とも言えるかもしれない。
マルカルスに巣くう闇を一掃できるチャンスが訪れたと考えれば、けして悪い状況ではない。
サルモールの指揮官として、マルカルスに赴任してからそこそこ経つゆえ、この町の内情はそれなりに把握しているつもりである。
まず、この町を「半分」牛耳っているシルバーブラッド家について整理しよう。
シドナ鉱山を監獄と化し、罪人に銀を掘らせて儲けた金で傭兵を雇い、市警隊をも賄賂で言いなりにさせている地元の名士シルバーブラッド。
もちろん、こんな金で寄せ集めた一団などサルモールの敵ではない。
ただ、このマルカルスという地においては、半分の権力を握らせておくことで、帝国の完全支配を防ぐことに意義があった。
新人はタロス崇拝者だけを狩っていれば良いと思っているかもしれないが、実際は生かさず殺さず、帝国の疲弊をコントロールするのが我らサルモールの狙いである。
スカイリムにおけるストームクロークのように、シルバーブラッドはマルカルスにおける帝国への対抗勢力として利用する価値が大いにあった。
そんな中、シルバーブラッドの掘り出す銀が、ウルフリック率いるストームクローク軍へ流れているのではないかと疑惑が持ち上がった。
その真偽を探るため帝国軍はスパイを放ったものの、あっさり返り討ちにあってしまった、というのが新人が見た殺人事件の真相だろう。
犯人はフォースウォーンということなら、シルバーブラッドがフォースウォーンに殺害を命じた可能性がある。
フォースウォーンとは、およそ20年前にウルフリックによってマルカルスから掃討された原住民だが、その残党がノルドへの恨みを抱きつつ、密かに町に紛れ込んでいる。
ノルドに恨みを持つ連中が、簡単にノルド人のシルバーブラッドに従うとは考えにくいが、全く無理な話ではない。
ノルドを殺せるとなれば、手を貸す者もいるだろう。
ただし、帝国はフォースウォーンにまで気が回らないようだ。
あくまでも知りたいのは、シルバーブラッドとストームクロークの関係であるらしい。
こんな間抜けな連中と狭い詰所を共同使用しなければならないのは、いささか不満であるが仕方がない。
こちらも見張られているが、口の軽い特使のおかげで、あちらの動向も筒抜けなのだから。
もし、シルバーブラッドとストームクロークの関係が本当ならば、サルモールは同盟関係上、帝国に加担し、彼らを排除せざるを得なくなる。
しかしそれは、シルバーブラッドを活用したい我々にとって不本意なことだ。
つまり、シルバーブラッドには、上手く立ち回ってもらわねば、こちらも困る。
シルバーブラッドの家長ソーンヴァーは、我々エルフに敵意をむき出しにしているが、大した男ではない。
この一連のシステムを・・・町に潜むフォースウォーンを巧みに操り、市警隊を金で丸め込み、物事が ”円滑に回るように”・・・舵を取っているのは、弟のソーナー・シルバーブラッドだった。
よって、何かあれば話をつけるべきは当然、弟の方である。
好戦的なウルフリック信奉者である兄とは違い、弟ソーナーは、サルモールと穏便であった方がマルカルスでのシルバーブラッドの地位が安泰でいられる現状を理解している。実に賢い。
だから私も彼を気に入っていた。
兄のタロス信仰も、弟に免じて見逃してやっているほどだ。
家長がタロス推しなおかげで、シルバーブラッド家がサルモールと繋がっているとは誰も思うまい。
だがしかし、今回の事件で我々の絶妙なバランスが傾き始めた。
サルモールの者を、ワザと投獄するなど、まるで宣戦布告である。
あの用心深いソーナーが、突然方針を変えたとは考えにくい。
何らかの手違いが起きたとも見れるが、心変わりがないとも言い切れない。
そこでまずは、話を聞いてやる寛容さを示してやろうと思う。
話の流れ次第では、その名の通りマルカルスには血が流れることになるだろう。
→第9話へつづく
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フォースウォーンの陰謀に巻き込まれた。
新人の部下から2人の名前を聞いた時、そう直感した。
同時に、私はこの時を待っていた、とも言えるかもしれない。
マルカルスに巣くう闇を一掃できるチャンスが訪れたと考えれば、けして悪い状況ではない。
まず、この町を「半分」牛耳っているシルバーブラッド家について整理しよう。
シドナ鉱山を監獄と化し、罪人に銀を掘らせて儲けた金で傭兵を雇い、市警隊をも賄賂で言いなりにさせている地元の名士シルバーブラッド。
もちろん、こんな金で寄せ集めた一団などサルモールの敵ではない。
ただ、このマルカルスという地においては、半分の権力を握らせておくことで、帝国の完全支配を防ぐことに意義があった。
スカイリムにおけるストームクロークのように、シルバーブラッドはマルカルスにおける帝国への対抗勢力として利用する価値が大いにあった。
そんな中、シルバーブラッドの掘り出す銀が、ウルフリック率いるストームクローク軍へ流れているのではないかと疑惑が持ち上がった。
その真偽を探るため帝国軍はスパイを放ったものの、あっさり返り討ちにあってしまった、というのが新人が見た殺人事件の真相だろう。
犯人はフォースウォーンということなら、シルバーブラッドがフォースウォーンに殺害を命じた可能性がある。
フォースウォーンとは、およそ20年前にウルフリックによってマルカルスから掃討された原住民だが、その残党がノルドへの恨みを抱きつつ、密かに町に紛れ込んでいる。
ノルドに恨みを持つ連中が、簡単にノルド人のシルバーブラッドに従うとは考えにくいが、全く無理な話ではない。
ノルドを殺せるとなれば、手を貸す者もいるだろう。
ただし、帝国はフォースウォーンにまで気が回らないようだ。
あくまでも知りたいのは、シルバーブラッドとストームクロークの関係であるらしい。
こんな間抜けな連中と狭い詰所を共同使用しなければならないのは、いささか不満であるが仕方がない。
こちらも見張られているが、口の軽い特使のおかげで、あちらの動向も筒抜けなのだから。
もし、シルバーブラッドとストームクロークの関係が本当ならば、サルモールは同盟関係上、帝国に加担し、彼らを排除せざるを得なくなる。
しかしそれは、シルバーブラッドを活用したい我々にとって不本意なことだ。
つまり、シルバーブラッドには、上手く立ち回ってもらわねば、こちらも困る。
シルバーブラッドの家長ソーンヴァーは、我々エルフに敵意をむき出しにしているが、大した男ではない。
この一連のシステムを・・・町に潜むフォースウォーンを巧みに操り、市警隊を金で丸め込み、物事が ”円滑に回るように”・・・舵を取っているのは、弟のソーナー・シルバーブラッドだった。
よって、何かあれば話をつけるべきは当然、弟の方である。
好戦的なウルフリック信奉者である兄とは違い、弟ソーナーは、サルモールと穏便であった方がマルカルスでのシルバーブラッドの地位が安泰でいられる現状を理解している。実に賢い。
だから私も彼を気に入っていた。
兄のタロス信仰も、弟に免じて見逃してやっているほどだ。
家長がタロス推しなおかげで、シルバーブラッド家がサルモールと繋がっているとは誰も思うまい。
サルモールの者を、ワザと投獄するなど、まるで宣戦布告である。
あの用心深いソーナーが、突然方針を変えたとは考えにくい。
何らかの手違いが起きたとも見れるが、心変わりがないとも言い切れない。
そこでまずは、話を聞いてやる寛容さを示してやろうと思う。
話の流れ次第では、その名の通りマルカルスには血が流れることになるだろう。
→第9話へつづく