第11話 野獣か犬か

これは、「フォースウォーンの陰謀」にはまって檻に入れられてしまった、主人を待つ飼い犬の話である。

前回の話はこちら



太陽の光が届かない鉱山の中では、時間の感覚がない。

どれほど経ったのだろうか?
いや、まだ数日も経ってないのかもしれない。

なのに、ずいぶん長いこと待っている気がする。
オンドルマール様は本気で来ないんじゃないかと思い始めていた。


ああ、初めて会った時、主人は俺と言ってくれたあの日がすでに懐かしい。

私は非情にも飼い主に捨てられてしまった哀れなイヌになってしまうのだろうか。

上司に、会いたくて会いたくて震える、
そんな時だった・・・!


突如、坑道に響き渡った聞き覚えのある美声!(CV:西健亮)

八大神にかけて!
あれは!オンドルマール様だーっつ!!!

私はひとりスタンディングオベーションで歓喜に沸いた。


ああっ!来てくれた!!
ほら見ろ!やっぱりうちの上司は最高だーっつ!!!

それは、両肩に黄金の鷲を従えた高貴なる救世主メシアの姿!
これぞ、世に誉れ高きサルモール!!

その神々しいまでの姿が視界に現れた途端、不安も絶望も消し飛んだ。
かわりに歓喜にむせび、涙も鼻水も出ていたかもしれない。

「助かった!」素直に言うと、そう確信したのである。


そして主人の姿を見て興奮する犬のごとく駆け寄ったが、「待て」の合図で体が反射的に止まり、上司にダイブしてしまう失態はかろうじて避けられた。

マダナックをご存知で?
ええ、ぜひ奴と話して下さい!あいつ、とんでもないこと考えてますから!
そっちの独房にいます。

さっきまで仲間になろうかなんて考えていたことは、もう棚上げだ。


門番:「貴様の上司か何だか知らねえが、部外者を簡単に通すと思ってんのか?この門が開くのは、マダナックが呼んだ時だけだ。それ以外は通行料を払え。俺に!」

門番は通行料をせびってきやがったのである。
なぜ貴様なんぞに・・・結局マダナックへの忠誠も、賄賂次第ということか。

しかもナイフって。
そんな厨二的な武器なんざ、我々ハイソサエティなエルフが持ち歩いてるわけがない。

オンドルマール:「ナイフとフォークは食事の時しか使わん。ナイフがないならダガーでいいだろ」

さすが高貴!
オンドルマール様は何の躊躇もなく、懐からエルフのダガーを差し出してくれた。


門番は要求した物よりはるかに高価なダガーが出てきて、得をしたってもんじゃないだろう。

黄金に輝くダガーにすっかり魅了された門番は、あっさりと独房の鍵ごと渡した。
(まさか鍵ごと渡してくれるとは・・・)

っふ!これがサルモールの力!屈強なオークですら一瞬にして手懐けてしまうオンドルマール様の”懐”を思い知ったか!


私が心の中で門番オークに舌を出して独房に入ると、先輩親衛隊が扉を閉めて内鍵し、鍵はそのままへし折ってしまった。

囚人:「おい!何しやがる・・・!?」

親衛隊:「クズ共に用はない。邪魔するな」

誰も独房に入って来られなくなったが、これでは我々も出られないのでは・・・?

それでも構わないと、オンドルマール様は足早やにマダナックの方へと進んだ。


マダナック:「しがない部下を助けに本当に来るとは。サルモールはよっぽど暇と見える」

オンドルマール:「可愛い部下を見捨てたりはしない」

ねえ!今の聞いた?可愛い部下だって!
私は、可愛い!部下なんだって!!

親衛隊:「言葉のあやよ、新人、黙って」

不安で心が揺れてた己が恥ずかしいですっ!


ソーナー?市警隊を操っていたもう1人の黒幕か。
私の知らないところで、やはりオンドルマール様が色々動いて下さってたようだ。

マダナック:「言っておくが、交渉には応じない」

オンドルマール:「それは助かる。交渉などする気はないのでな」

マダナック:「では、俺を殺しに来たのか?」


マダナック:「ハッ!タロスへの怨恨を何世紀も引きずって、大戦を起こした貴様たちに言われたくはない!」

マダナックは手を止め、私の顔を見た。

マダナック:「騙されるなよ新入り。お前の上司は相当腹黒い。ノルドにへつらい、プライドの欠片もなく欲深い男だ。私を殺すためにお前を利用したのだ!」

オンドルマール:「そうやって虚偽を吐き散らし、囚人を仲間に取り込むのか?」

マダナック:「まだ選択の余地はあるぞ新入り。主人を選び損ねれば、お前は野獣に成り果てるだろう。何の理性もないイカれた野獣にな!」

私が野獣・・・!?


ついカッとなって言ってしまった!

だが私はもう迷わないっ!!
私はオンドルマール様の、忠犬になるのだ!!

マダナック:「すでにイカれていたようだな!だが計画の邪魔はさせん!!」


一触即発の糸がついに切れた!



親衛隊:「どけ!新人!」

先輩兵士が飛び出し、剣を抜き、マダナックに斬りかかる!


そこにトドメの閃光が、マダナックの体を貫いた!



そしてマダナックの死体が転がった。
一瞬の出来事である。

囚人:「おい!何やってんだよ!開けろ!エルフ野郎!」

独房の外では囚人たちが騒いでいる。幸い中には入って来られないが、奴らがマダナックのこの姿を見ればどうなるか。

オンドルマール:「行くぞ!」

しかし、あの、どうやって?独房の鍵は壊してしまいましたよね?
あっちに戻れば囚人たちに囲まれるでしょうし、戻りたくもないですけど。


親衛隊:「ありました!ここです!」

先輩兵士が何かを見つけた。
それは、大人一人がぎりぎり通れるような、いわゆる秘密のトンネルである。

マダナックが脱獄に使おうとしていた道に違いない!

私たちはそのトンネルを進んだ。


しばらく進むと、突如開けた場所に出た。
どこかアンダーストーン砦に似ている。

親衛隊A:「これはドワーフの遺跡。マルカルスの地下にはこういう遺跡が広がっているの。まだ発掘されていない地下遺跡がたくさんあるわ」

親衛隊B:「囚人らはこの遺跡を掘り当てて、脱獄しようとしてたんだ。今日は俺たちが代わりに使ったってわけだけど」


オンドルマール:「脱獄ルートについてはタレ込みがあってな。地上にいるフォースウォーンの中には、我々と共存して行こうと前向きな連中も多くいるのだ」

そうでしたか!
やはりオンドルマール様と先輩は、私を助けるために、色々と根回ししてくれていたのですね?

地下で恨みを募らせていたあの連中が町に出ようものなら、市民を虐殺し始めたに違いない。
マダナックは戦争を始めようとしていたのだ。

ああ、平和は我らの手によって守られた!
サルモール万歳!!


監獄から抜け出ると、1人の男が待っていた。

ソーナー:「これでシドナ鉱山は、いや、マルカルスは変わるだろう。リーチはノルドのもの・・・いや、ノルドとエルフのものだ。ははは・・・」


よくわからない人から、礼を言われる。

結局、私は牢獄に入れられただけで、何もしていない気がするのだが・・・

まあ、感謝されるのは悪い事じゃなし、良しとしようか。


しかし、脱獄目前に王を失った囚人たちは今頃どう思っているだろうか?
再び絶望し、銀を掘り続けるのか。

もしかすると、今度はオンドルマール様があの連中に希望を与えるのかもしれない。
そうなれば、とても素晴らしいことだ!

我らサルモールが力を貸せば、スカイリムの未来はきっと明るいに違いない!

(完)

※構成上、シナリオのねつ造が含まれます。実際のゲーム内容とは異なる部分がありますので、詳細はぜひプレイしてお確かめください😊

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