第5話 揺れる想い

これは、「エルトリスのメモを読む」で盛大な勘違いをしたサルモール・マルカルス支部の新人兵士なりきりRPストーリーである。

前回の話はこちら




職場のあるアンダーストーン砦に入ると、まずイチャモンをつけてくるのも「シルバーブラッド」である。

鋼鉄の鎧を装備し、いつでも臨戦態勢で待ち構えているが、首長には相手にされず、階段の下でぼやくことしかできない哀れな男だ。

先日、私がブチ込まれたシドナ鉱山を所有していることが、唯一の自慢であるらしい。


おまけにこのソーンヴァ―という男、タロス信仰を匂わせ、エルフに嫌味をかまして来る始末・・・!

我々が気に入らないのは当然だろう?
タロスは神ではない!あくまでも人間、エルフを大量殺戮したサイコパス野郎だ!
だから、それを崇めるカルト集団を我々サルモールは排除している!

堂々と毒を吐くこの男を、オンドルマール様はなぜ放置しておくのだろうか?

何か考えがあってのことなのだろうが、これから毎日こいつの前を通って出勤しなければならないと思うと、不愉快極まりない。

が、今日はそれどころじゃない問題がある。



私は出勤してからも「手紙」のことを考えていた。

タロスに関することであれば、上司に報告するのが責務であるが・・・少女の青春の1ページを無下にするのは、あまりに非情ではないかとも思っていたのだ。

親衛隊A:「あなた、ホワイトランのヘイムスカーを殺ったんですってね。やるじゃない」

そんな時、先輩兵士が雑談を持ちかけてきた。
ヘイムスカー?・・・ああ、あのタロス狂信者のことスね。
なにせ試験でしたから、そりゃもう必死でやりましたよ。

親衛隊B:「今年の入試問題は難しかったな。誰があの難関を突破できるか、俺たちの間でもちょっとした話題になってたよ」

そうなんですか。


ちなみに先輩たちの時はどんな試験だったんですか?

親衛隊A:「私の時はサルモール全盛期だったから。若いってだけでもてはやされて、試験というよりパーティでの勧誘だったわね」

パーティで就職活動ですか・・・羨ましい。そんな時代があったのですね。


親衛隊B:「俺の時はイス取りゲームだったけど?競争は好きじゃないから、イスを奪い合うのはそれはそれで辛かったよ」

イス取りって・・・そうですか。


何とも世代違いの匂いがする先輩たちであるが仕方がない。
我々エルフは長寿だから、見た目は同じ感じでも数百年の年の差があったりして、ジェネレーションギャップが激しかったりするんだ。

だから寿命の短い人間とは、なおさら釣り合わない。
今は可愛いホロキだって、私を置いてあっと言う間にお婆さんになってしまうだろうな・・・。

そんな時、我らのご主人様、もとい、上司であるオンドルマール様が現れた。


オンドルマール様は団塊の世代なのだろうか?
そんな余計なことを考えつつ、朝のミーティングが始まった。

オンドルマール:「先月における我々マルカルス支部の成績について、エレンウェン大使よりお褒めの言葉をいただいた。まずはそれを伝えておく」



「あのバブリーな味がまた楽しめるなんて!嬉しいです!」
「ここの金属のにおいがする酒にはうんざりですから!」

コロヴィアン・ブランデーとはどんな美酒なのだろうか?
いや、マルカルスの飲み物が不味すぎるのか。お世辞にも宿屋の食事だって旨いとは言えないし。
宿屋といえば・・・あの手紙の件はどうしよう・・・。

オンドルマール:「今月は新人も来たことだし、タロス撲滅活動を一層強化するぞ!」

「イエッサー!」
「期待してるぞ新人!」
「もう捕まるなよ?はははは!」

明るい職場で良かった。
私は頃合いをみて、それとなく話を切り出した。


オンドルマール:「それでもあるとすれば、かつてウルフリックの一味がマルカルスに居座っていた頃に使用していたタロスの祭壇だな」

あるにはあるんだ。
手紙の件は、きっとその祠に違いない。

オンドルマール:「当然、今は閉鎖されているが、それが何か?」

えっと、あの・・・この町のタロス文化についても知っておこうと思いまして。

オンドルマール:「ほう、敵を知る努力とは賢明だ」

私は結局、本当のことを言えなかった。
手紙のことを言えば、オンドルマール様はタロス信者を疑い現場に乗り込むだろう。
そこに居合わせた宿屋の娘はどうなるかと考えると・・・


オンドルマール:「そうだな、本日は急ぎの案件もないことだし。お前はかつてエルフを苦しめた悪の権化の姿を見てくるがいい。きっとノルドへの殺意とやる気が沸くぞ。ディベラ聖堂の下だ。ついでに施錠も確認してこい」

そう言ってオンドルマール様は古びた鍵を渡してくれた。


ああ、申し訳ありませんご主人様。下僕は小さな嘘をついてしまいました。
早急に問題を解決してまいりますので、どうかお許しを・・・!

私は心の中で土下座していた。

この後、ドヴァーキンの方々はご察しの展開になる。
だが、この時点での私は、思い込みが勝り、過ちに気付くことはなかった。

→第6話へつづく

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